「髪は増えたけれど、なんだか体毛も濃くなった気がする…」
ミノキシジルを使った薄毛治療を始めた方から、こんな声を聞くことがあります。
効果を実感し始めた矢先に、思わぬ変化に戸惑う方も少なくありません。
とくに、ネットの情報だけを頼りに、自己判断で治療法を選んでしまった場合、「こんなはずじゃなかった」と感じることも。
薄毛治療には、ミノキシジルをはじめとした内服薬・外用薬、注入治療(メソセラピー)、植毛など、さまざまな選択肢がありますが、すべての方法が誰にでも合うわけではありません。体質や薄毛の進行度、ライフスタイルによって、向き不向きがあるのです。
実際、多くのトラブルは「正しい情報を知らなかった」「相談する相手を間違えた」ことから始まっています。
だからこそ、治療を始める前に、信頼できる専門家に相談し、自分に合った方法を見極めることが何より大切です。
この記事では、ミノキシジルによる体毛の増加に関する正しい知識と、髪の毛だけを増やすための治療法について、わかりやすく解説しています。
読み進めていただければ、後悔しない薄毛治療の選び方が見えてくるはずです。
目次
AGA・薄毛の治療法
薄毛治療には、大きく分けて「薬による治療」「注入治療(メソセラピー)」「植毛手術」の3つの方法があります。
それぞれの治療法には特徴があり、症状の進行度や生活スタイル、体質に応じて、最適な方法を選ぶことが大切です。
薄毛の原因や進み方は人によって異なるため、すべての人に同じ治療法が合うわけではありません。
自分に合った治療法を選ぶことで、効果的かつストレスの少ない薄毛対策が可能になります。
たとえば、初期のAGA(男性型脱毛症)には、フィナステリドやデュタステリドなどの内服薬が有効です。
抜け毛を抑え、進行を遅らせる効果が期待できます。
一方で、「薬は使いたくない」「副作用が不安」という方には、頭皮に直接有効成分を届けるメソセラピー(注入治療)が選ばれています。
さらに、「短期間で目に見える変化が欲しい」という方には、見た目に明らかな改善が期待できる植毛手術という選択肢もあります。
このように、薄毛治療にはさまざまなアプローチがあり、目的やお悩みに応じて柔軟に選ぶことが可能です。、自分に最適な治療法を見つけましょう。
まずはそれぞれの特徴を理解したうえで、ライフスタイルやお悩みに合った治療法を選ぶことが、効果的な薄毛対策の第一歩です。
それぞれの治療法の特徴について紹介します。
治療薬
AGA・薄毛治療薬は、抜け毛を防止する薬と発毛を促す薬の大きく2種類に分けられます。
【内服薬】抜け毛を防止するフィナステリド・デュタステリド
フィナステリドとデュタステリドは、どちらも男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑える働きがあります。
このDHTが毛根に作用することで薄毛が進行するため、その働きをブロックすることで、抜け毛の予防や進行の抑制が期待できます。
特に、AGA(男性型脱毛症)の初期段階において、高い効果が認められている治療薬です。
ただし、これらの薬は男性専用であり、妊娠中または妊娠の可能性がある女性、授乳中の女性の服用は禁忌とされています。
重篤な副作用が生じるおそれがあるため、取り扱いには十分な注意が必要です。
【内服薬】発毛を促すミノキシジル
ミノキシジルは、もともと血管拡張剤として開発された成分で、頭皮の血流を改善し、毛根に栄養が届きやすくすることで発毛を促す作用があります。
この働きにより、すでに髪の毛が細くなっている方や、発毛を望む方に適した治療薬とされています。
また、ミノキシジルは男性型脱毛症(AGA)だけでなく、女性型脱毛症にも効果が期待できる点が特徴です。
そのため、男女問わず広く使用されており、外用薬(塗り薬)や内服薬として提供されています。
メソセラピー
「薬に頼らずに、自分の力で髪を生やせたらいいのに」
そんな風に思ったことはありませんか?
メソセラピー(毛髪再生医療)は、そんな願いを叶えるために生まれた治療法です。
薬で無理にコントロールするのではなく、人が本来もっている“髪が育つ力”をサポートするのが特徴です。
たとえば、髪のもとになる細胞や、髪の成長を助ける成分(成長因子)を頭皮の細胞に届けて、髪が育ちやすい環境をつくります。
内服薬や外用薬に頼らず、自然なかたちで発毛をめざす「やさしい治療法」として、多くの患者さまに選ばれています。
植毛
植毛治療は、薄毛が気になる部分に毛髪を移植する外科的な治療法です。
使われる毛髪は大きく分けて2種類あり、ひとつは自身の髪(主に後頭部)を移植する自毛植毛、もうひとつは人工的に作られた毛(人工毛)を使う人工毛植毛です。
とくに自毛植毛は、自分の髪を使うため定着すれば自然に伸びるのが大きな特徴です。
薄毛がかなり進行している方や、見た目の変化を早く実感したい方に選ばれています。
外科的な処置にはなりますが、技術の進歩により負担は軽減されてきています。
「できるだけ確実な結果を出したい」「早く見た目を改善したい」という方にとって、有力な選択肢のひとつです。
体毛が濃くなる可能性のある薬「ミノキシジル」とは?
ミノキシジルは、もともと高血圧の治療薬として開発された成分です。
しかし、その使用中に「体毛が濃くなる」という副作用が報告され、やがて発毛効果があることが偶然発見されました。
現在では、薄毛治療薬として世界中で広く使われており、「発毛を促す成分」としての効果が科学的に認められている薬のひとつです。
治療には、頭皮に直接塗布する外用薬と内服薬の2種類があります。
なお、内服薬を使用した場合にまれに腕や顔など、頭皮以外の体毛が濃くなることがあるため、気になる方は医師と相談のうえ、ご自身に合った使用方法を選ぶことが大切です。
ミノキシジルの効果
ミノキシジルには血管を拡張する作用があり、頭皮の血流を改善することで、毛根に酸素や栄養が届きやすくなります。
その結果、髪を作るために必要な環境が整い、毛根の細胞が活性化されます。
この働きにより、髪の毛が細くなってきた方は太くしっかりとした毛に改善される可能性があり、脱毛が進んでいる方には新たな発毛を促す効果が期待できます。
薄毛の進行を遅らせるだけでなく、髪を「育てる力」を引き出す治療薬として、多くの方に選ばれている理由がここにあります。
ミノキシジルの内服薬の副作用
しかし、冒頭にもお伝えしたとおり、ミノキシジル内服薬は、髪の毛だけでなく体毛も濃くなる可能性があります。
内服薬は体内に吸収された後、血液によって全身へ運ばれるため、全身の毛根に作用してしまうからです。
たとえば、ある研究では、ミノキシジルを内服した人のうち約15%に体毛が濃くなる「多毛症」の症状が現れたと報告されています1。
このように、ミノキシジルの内服は高い発毛効果が期待できる一方で、体毛の増加する可能性もあります。
ミノキシジルの外用薬
外用薬は頭皮に直接塗布して使用します。
薬剤を塗布した特定の部位にのみ作用するため、塗布した箇所以外の体毛への影響は少ないとされています。
日本皮膚科学会のガイドラインによると、男性型脱毛症には5%、女性型脱毛症には1%の濃度のものが推奨されています。
ミノキシジルの服用で体毛が濃くなる確率は約15%
ミノキシジルの服用によって体毛が濃くなる方は、一定の割合で存在します。
ミノキシジルは全身の血管を広げて作用するため、髪以外の体毛にも影響が出る可能性があるのです。
実際に行われた1,404人を対象とした研究では、約15.1%の人に多毛症が見られました2。
つまり、全ての人に起こるわけではありませんが、副作用としての「体毛の増加」は珍しいことではないと言えるでしょう。
男女の違い
ミノキシジルの服用によって体毛が濃くなる確率は女性に多くみられました。
研究結果によると、ミノキシジル外用薬5%を使用した女性の9%、男性の1%に多毛症がみられました3。
顔、上腕、下腕の広範囲にわたって現れたそうです。
多毛症の症状はミノキシジルを中止してから4〜5ヶ月後に解消したものの、女性に多くみられた原因は現時点では不明とされています。
外用薬と内服薬の違い
ミノキシジル外用薬と内服薬では、内服薬の方が体毛が濃くなる可能性が高いです。
ミノキシジル外用薬は患部に直接塗布するため作用は局所的ですが、ミノキシジル内服薬は体内に取り込まれるため全身に作用します。
先ほどご紹介した研究結果を比較しても、多毛症の発現率はミノキシジル内服薬だと15.1%、ミノキシジル外用薬だと女性9%・男性1%です。
つまり、ミノキシジル内服薬は外用薬よりも体毛が濃くなる可能性が高いと言えるでしょう。
ミノキシジルによって体毛が濃くなったときの対処法
ミノキシジルの副作用で体毛が濃くなった場合は薬の効果が出ている証拠でもありますが、体毛の濃さが気になる方は次のような対処方法を試してみてください。
使用方法を見直す
体毛の増加が気になる場合は、ミノキシジルの使い方を見直すことが効果的です。
使用方法によって、薬が頭皮以外に付着してしまい、思わぬ部位の毛が濃くなることがあるからです。
たとえば、塗布後に手を洗わなかったり、薬液が顔に垂れてしまうと、局所的に体毛が増えることがあります。
こうしたリスクを避けるためにも、使用量や使用方法を守り、必要であれば代替治療への切り替えも検討しましょう。
使用を中止する
使用を中止することも一つの方法です。
一般的にはミノキシジルの使用を中止すると数ヶ月で体毛が元に戻ることが多いです。
ただし、使用を中止すると薄毛やAGAがさらに進行してしまうリスクがあります。
AGAは徐々に症状が進んでいくため、何も対策をしなければ薄毛が目立つようになります。
ミノキシジルを使って髪の毛を増やせても、使用を中止すると再び薄毛が目立ち始めることが多いのです。
気になる部分の手入れをする
定期的なメンテナンスが必要になりますが、以下のようなケアをすることでムダ毛が目立たなくなります。
- シェービングを行う
- 脱色して目立たなくする
- 脱毛する(医療脱毛・美容脱毛)
また何度もメンテナンスをするのが面倒だという方は、医療機関で永久脱毛するのも一つの手です。
医師に相談する
体毛の副作用が気になる場合は、自己判断せず医師に相談することが大切です。
副作用や発毛効果には個人差があり、最適な治療法は一人ひとり異なるためです。
たとえば、内服薬で体毛が濃くなってしまった場合でも、外用薬やメソセラピーなど、体毛への影響を抑えた治療に切り替えることも可能です。
まずは医師と相談し、ご自身に合った治療方法を見つけることが、安心して薄毛治療を続ける第一歩となります。
体毛を増やさずに髪の毛だけ増やす方法
メソセラピーを受ける
メソセラピーとは、成長因子などの発毛・育毛の効果が期待できる成分を直接頭皮に注入する治療法です。
薄毛が気になる部位に対して成長因子を直接注入するため、体毛の増加を気にせず髪を成長させることができます。
副作用もほとんどないというメリットがあります。
当院では、毛髪再生に特化した幹細胞セクレトーム(臍帯由来)の「ReGrow」を頭皮に直接投与する治療を行います。
※幹細胞セクレトームとは、体内に存在する各種幹細胞を培養した際に得られる上澄み液で、発毛に役立つ成分が豊富に含まれています。
当院のメソセラピーは水光注射という機器を用いて、患部に注入液を直接注入します。
頭皮全体にまんべんなく注入することもできますし、薄毛が気になる部分への重点的な注入も可能です。
脱毛を行いながら治療を行う
脱毛サロンや医療脱毛に通うことで、気になる部位の脱毛と並行して、ミノキシジルの服用による髪の成長サポートが可能です。
脱毛サロンでは、主に光脱毛器を用いて施術が行われます。
これは、メラニン色素に反応する特殊な光を照射することで毛根にダメージを与え、ムダ毛を目立ちにくくする方法です。
一方、医療脱毛は医療行為であり、高出力のレーザーを用いて毛根周辺の組織そのものを破壊します。
脱毛サロンと比較すると、より高い脱毛効果が期待できますが、施術時に痛みを感じやすい傾向があります。
体毛を増やしたくない人向けのAGA治療に関する質問
体毛が濃くなったら戻らないのか ?
ミノキシジルを使用した場合に起こる体毛の増加は一時的なものです。
ミノキシジルの使用を中断することで、体内の成分が減少し体毛は元の状態に戻り始めます。
体毛の成長には「毛周期」と呼ばれる一定のサイクルがあるため、薬を止めてから体毛が細くなるまでには変化は徐々にしか現れません。
また、ミノキシジルの使用を中断した場合、薄毛の症状が再び進行する可能性があります。
永久脱毛した箇所も体毛が濃くなるのか?
ミノキシジルの使用によって脱毛した箇所から新しい毛が生えてくるかは、施術の種類によって異なります。
■医療脱毛
レーザーを照射し毛根を破壊するため、脱毛した部分から毛が生えることはほぼありません。
■エステ脱毛
光を照射し制毛・抑毛を目的とするため、毛が生える可能性があります。
エステ脱毛はムダ毛処理の頻度を減らすための施術となるため、多毛症によって体毛が再び濃くなってしまうことがあります。
一方で医療脱毛は、レーザーの照射によって毛根を破壊するため、基本的に毛は生えてきません。
しかし脱毛回数が少ない場合など、毛根を完全に破壊しきれていないと体毛が濃くなる可能性があります。
まとめ
ミノキシジルを服用すると、発毛促進作用によって体毛が濃くなることがあります。
見た目が気になる場合は、ミノキシジルを使わずに行うメソセラピーなどの治療法に切り替えるという対処法もあります。
副作用もほとんどなく、体毛の増加を気にせず髪の毛だけを増やすことが可能です。
自身で判断せずに、まずは医師に相談してみましょう。
参考文献
- Vañó-Galván, S., Pirmez, R., Hermosa-Gelbard, Á., Bhoyrul, B., et al. (2021). Safety of low-dose oral minoxidil for hair loss: A multicenter study of 1404 patients. Journal of the American Academy of Dermatology, 84(6), 1614–1621. https://doi.org/10.1016/j.jaad.2020.09.055
- Vañó-Galván, S., Pirmez, R., Hermosa-Gelbard, Á., Bhoyrul, B., et al. (2021). Safety of low-dose oral minoxidil for hair loss: A multicenter study of 1404 patients. Journal of the American Academy of Dermatology, 84(6), 1614–1621. https://doi.org/10.1016/j.jaad.2020.09.055
- Rossi A, Cantisani C, Melis L, Iorio A, Scali E, Calvieri S. Minoxidil use in dermatology, side effects and recent patents. Recent Pat Inflamm Allergy Drug Discov. 2012 May;6(2):130-6. doi: 10.2174/187221312800166859. PMID: 22409453.s