「最近、同じ話を何度もする」「約束を忘れることが増えたけれど、年齢のせいだろう」。
そう考えて様子を見ているうちに、認知症の初期症状を見逃してしまうケースは少なくありません。
インターネットやSNSの情報だけで自己判断し、受診や相談が遅れてしまうこともあります。
認知症は、単なる物忘れとは異なり、記憶力だけでなく判断力や理解力、性格や行動にも変化が現れることがあります。
物忘れが目立つ人もいれば、怒りっぽくなる、意欲が低下する、不安が強くなるなどのサインから始まる人もいます。
そのため、「まだ大丈夫」と決めつけず、正しい知識を持つことが大切です。
この記事では、認知症と加齢による物忘れの違い、初期症状のチェックポイント、家族が異変に気づいたときの対応方法をわかりやすく解説します。
早めに専門家へ相談する判断材料として、ぜひ参考にしてください。
目次
認知症とは?初期症状を知る前に理解しておきたい基本

認知症という言葉はよく知られていますが、「単なる物忘れと何が違うのか」「どのような症状が認知症らしいのか」までは十分に理解されていないことも少なくありません。
初期症状を正しく見極めるためには、まず認知症そのものについて知っておくことが大切です。
認知症の定義と代表的な種類
認知症という言葉は広く知られていますが、実は特定の病名ではありません。
脳の病気によって記憶や判断、理解、計画を立てて行動する力などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障が出ている状態の総称です1。
認知症にはいくつかの種類があり、原因となる病気によって症状の現れ方や進行の仕方が異なります。
初期から物忘れが目立つものもあれば、性格や行動の変化が先に現れるものもあるため、特徴を知っておくことは早期発見の手がかりになります。

認知症の中で最も多いのはアルツハイマー型認知症で、全体の約7割を占めるとされています。2
物忘れから始まることが多く、一般的に「認知症」と聞いてイメージされる症状の多くは、このタイプにみられるものです。
一方で、脳梗塞などが関係する血管性認知症や、幻視が特徴的なレビー小体型認知症、行動や人格の変化が目立つ前頭側頭型認知症なども存在します。
そのため、最初に現れるサインも「物忘れ」だけとは限らず、歩き方の変化、意欲の低下、見えないものが見える、性格が変わったように見えるなど、タイプによって目立つ症状が変わります。
認知症と加齢による物忘れの違い
「最近忘れっぽくなったけれど、年齢のせいなのか認知症なのか分からない」という不安を抱える人は少なくありません。
実際には、加齢による物忘れと認知症による記憶障害には違いがあります。

大きな違いは、「体験の一部を忘れる」のか、「体験そのものを忘れる」のかという点です。
加齢による物忘れでは朝食のおかずが思い出せないなど記憶の一部が抜け落ちますが、認知症では朝食を食べたこと自体を覚えていないことがあります。3
また、加齢による物忘れではメモや会話などのヒントがあれば思い出せることが多い一方、認知症ではきっかけがあっても記憶をたどれない場合があります。
さらに、買い物や金銭管理、服薬管理などの日常生活に影響が出始めることも特徴です。
認知症のサインは、物忘れの量ではなく「忘れ方の違い」に現れることがあります。
同じ質問を繰り返す、約束そのものを覚えていない、慣れた道で迷うといった変化が続く場合は、「年齢のせい」と決めつけないことが大切です。
物忘れだけで判断するのではなく、日常生活に影響が出始めていないかという視点で様子を見ることが早期発見につながります。
認知症の初期症状とは?気づくべきサインをチェック

認知症の初期症状は、単に物忘れが増えるだけではありません。
実際には、考える力や判断する力の変化、性格や行動の変化、気持ちの変化などが少しずつ現れることがあります。
初期の段階では本人も周囲も「年齢のせい」「疲れているだけ」と考えやすく、変化を見過ごしてしまうことも少なくありません。
大切なのは一つひとつの症状ではなく、以前との違いが続いているかどうかです。
まずは認知症の初期にみられやすいサインを確認してみましょう。
記憶や理解力の変化
「同じ話を何度もするようになった」「さっき伝えたことを覚えていない」。
こうした変化は、認知症の初期にみられるサインの一つです。
最近の出来事を覚えにくくなるだけでなく、考える力や判断する力、段取りを立てる力にも少しずつ変化が現れます。
例えば、「さっき聞いた話を忘れてしまう」「同じことを何度も質問する」といった様子は、家族が最初に気づきやすい変化の一つです。
単に名前が思い出せないのではなく、新しく経験した出来事そのものを記憶しにくくなっている場合があります。

また、認知症では理解力や判断力にも影響が及ぶことがあります。
公共料金の支払いを忘れる、買い物で必要なものを選べない、慣れた手続きに時間がかかるなど、一つひとつは小さな変化でも、振り返ると以前との違いが見えてくることがあります。
料理や掃除、洗濯などの家事も同様です。
これまで自然にできていた段取りが分からなくなり、途中で手が止まったり順番を間違えたりすることがあります。
認知症の初期には、物忘れだけでなく「今まで当たり前にできていたことが難しくなる」という変化が現れることがあります。
一つの出来事だけで判断する必要はありませんが、以前との違いが複数みられる場合は、早めに状態を確認しておくと安心です。
性格や行動パターンの変化
認知症の初期には、性格や行動の変化が現れることがあります。
本人は自覚していないことも多く、「最近なんだか以前と違う」と家族や周囲の人が先に気づくケースも少なくありません。
例えば、これまで楽しんでいた趣味や外出に興味を示さなくなったり、人付き合いを避けるようになったりすることがあります。
こうした変化は単なる気分の問題ではなく、意欲の低下や認知機能の変化が影響している場合があります。4
また、自分の記憶や判断に自信が持てなくなることで、以前より頑固になったように見えたり、些細なことで怒りっぽくなったりすることもあります。

本人としては混乱や不安を抱えているものの、それをうまく表現できず、感情として現れている場合もあります。
認知症が進み始めると、失敗を認めたくない気持ちから言い訳が増えたり、自分の間違いを周囲のせいにしたりすることがあります。
財布や鍵が見つからないときに「誰かに盗られた」と考えてしまうこともあり、家族との関係がぎくしゃくするきっかけになることもあります。
「性格が変わった」と感じる変化の背景に、認知機能の低下が隠れていることがあります。
怒りっぽさや無関心だけを見るのではなく、以前と比べて行動パターンが変わっていないかという視点で様子を見てみることが大切です。
感情や心理状態の変化
認知症の初期には、本人自身が「何かおかしい」「以前のようにできない」と感じていることがあります。
ただし、その違和感をうまく言葉にできないため、気持ちの変化として表れることも少なくありません。
とくによくみられるのが不安感です。
約束を忘れてしまうのではないか、道に迷うのではないかと心配になり、何度も予定を確認したり、家族に頼る場面が増えたりすることがあります。

また、以前は難なくできていたことに時間がかかるようになると、自信を失ってしまうことがあります。
その結果、人と会う機会を避けたり、新しいことに挑戦しなくなったりするなど、気持ちが内向きになる場合もあります。
気分の落ち込みが続いたり、以前は楽しめていたことに興味が持てなくなったりすることもあります。
周囲からは「元気がなくなった」「何をするにも消極的になった」と見えることがあり、本人も理由の分からない不安や焦りを抱えている場合があります。
認知症の初期には、本人が最も戸惑っていることも少なくありません。
物忘れや行動の変化だけでなく、不安が強くなっていないか、自信を失っていないかという視点で様子を見ることも重要です。
初期症状セルフチェック表で当てはまる項目を確認しよう
認知症の初期症状は少しずつ現れるため、本人も家族も変化に気づきにくいことがあります。
気になる症状がある場合は、まず現在の状態を振り返ってみましょう。

チェック項目に当てはまるものがあっても、それだけで認知症と判断できるわけではありません。
疲労やストレス、睡眠不足、体調不良などによって似た症状が現れることもあります。
大切なのは項目の数よりも、以前にはなかった変化が続いているかどうかです。
一つひとつの変化は小さく見えても、振り返ると複数のサインが重なっていることがあります。
また、認知症の種類によって現れやすい症状は異なるため、どのような変化が目立つかにも注目してみることが大切です。
認知症の種類別|特徴的な初期症状

セルフチェックで気になる項目があったとしても、現れ方は認知症の種類によって異なります。
物忘れから始まるものもあれば、歩行の変化や幻覚、性格の変化が目立つものもあります。
そのため、「認知症らしい症状=物忘れ」と決めつけてしまうと、見逃してしまうことも少なくありません。

アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多いタイプです。
初期には新しい出来事を覚えにくくなることが多く、同じ話を繰り返したり、約束を忘れたりすることがあります5。
70歳以上の高齢者に多く、糖尿病などの生活習慣病がリスクを高めるとされており、病理的変化が出現してから発症までに長い期間を経て、ゆっくり進行することが特徴です6。
予定を管理できなくなる、同じ物を何度も買うなど、日常生活への影響が少しずつ目立つようになります。
血管性認知症
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などによって脳の血流が障害されることで起こる認知症です7。
物忘れだけでなく、歩行が不安定になる、手足が動かしにくくなるといった身体症状がみられることがあります。
高血圧や糖尿病、脳卒中の既往があり、物忘れに加えて身体機能の変化がみられる場合は注意が必要です。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症では、物忘れよりも先に別の症状が現れることがあります。
代表的なのが、実際には存在しない人や動物が見える「幻視」です8。
また、手足が震える、動作がゆっくりになるなど、パーキンソン病に似た症状がみられることもあります。
物忘れよりも幻視や手足の動かしにくさが目立つ場合は、レビー小体型認知症の可能性も考えられます。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、記憶障害よりも性格や行動の変化が目立ちやすい認知症です。9
40〜50代と比較的若い年代で発症することが多く、初期から社会生活への影響が大きい点が特徴です。
これまで礼儀正しかった人が急に配慮のない発言をするようになったり、同じ行動を繰り返したりすることがあります。
また、ルールへのこだわりが強くなるなど、周囲との関係に変化が生じることもあります。
初期には物忘れがあまり目立たないため、認知症ではなく性格の問題と誤解されるケースも少なくありません。
「最近性格が変わった」と感じる変化が続いている場合は、前頭側頭型認知症が背景にある可能性もあります。

認知症は種類によって初期症状の現れ方が異なるため、「物忘れがないから認知症ではない」とは言い切れません。
気になる変化がある場合は、一つの症状だけで判断せず、全体の様子を見ることが大切です。
家族の異変に気づいたとき、どう動けばいい?

認知症の初期症状は、本人よりも家族や周囲の人が先に気づくことが少なくありません。
しかし、気になる変化があっても「まだ受診するほどではないかもしれない」「どう切り出せばいいのだろう」と迷うことも多いものです。
一方で、無理に受診を勧めるとかえって反発を招くこともあります。
大切なのは、本人の気持ちに配慮しながら、適切なタイミングで相談や受診につなげることです。
スムーズに受診につなげるコツ
認知症の可能性が気になっても、本人が自ら受診を希望するとは限りません。
とくに初期の段階では、「年齢のせいだから大丈夫」「自分は問題ない」と考えることも多く、受診を勧められること自体に抵抗を感じる場合があります。
そのため、「認知症かもしれないから病院へ行こう」と直接伝えるよりも、「最近少し疲れやすそうだから一度相談してみない?」「健康診断のついでに診てもらおうか」など、本人が受け入れやすい形で提案する方がスムーズです。
また、かかりつけ医に相談したり、脳ドックや物忘れ外来を受診のきっかけにしたりする方法もあります。
家族だけで抱え込まず、地域包括支援センターなどの相談窓口を活用することも選択肢の一つです。

大切なのは「認知症を認めてもらうこと」ではなく、気になっている変化について一緒に確認することです。
本人を説得しようとするよりも、不安や困りごとに寄り添う姿勢が受診につながりやすくなります。
受診前に準備しておくと安心なこと
受診の際は、気になっている症状をあらかじめ整理しておくと診察がスムーズになります。
本人は変化を自覚していないこともあるため、家族が感じている違和感を記録しておくことも大切です。
例えば、「同じ質問を繰り返すようになった」「買い物のミスが増えた」「約束を忘れることが続いている」など、いつ頃からどのような変化があったのかをメモしておくと、医師に状況を伝えやすくなります。
可能であれば家族も一緒に受診し、普段の様子を補足できると安心です。
本人だけでは症状を十分に説明できない場合もあるため、家族からの情報が診断の参考になることがあります。

受診前の準備は、正確な診断だけでなく、その後の支援や治療方針を考えるうえでも役立ちます。
気になる変化がある場合は、一人で判断しようとせず、まず状況を整理することから始めてみましょう。
認知症の可能性が見えてきたら?次に考えたいこと

認知症が疑われる状況になると、受診だけでなく、その後の生活についても考え始める必要があります。
初期の段階で状況を把握し、家族で話し合いながら今後の生活を整えていくことで、本人も家族も安心して過ごしやすくなります。

ステップ① 医師の診断を受ける
気になる症状が続いている場合は、まず現在の状態を正しく把握することが大切です。
セルフチェックは気づきのきっかけになりますが、それだけで認知症かどうかを判断することはできません。
医療機関では問診や認知機能検査、必要に応じて画像検査などを行い、症状の原因を確認します10。
認知症と似た症状を示す病気が見つかることもあるため、自己判断で決めつけないことが大切です。
まずは「認知症かどうか」ではなく、「なぜその症状が起きているのか」を確認することが出発点になります。
そのうえで、診断結果を踏まえながら今後の生活について考えていくことが大切です。
ステップ② 家族で話し合う
認知症と診断された場合、症状そのものだけでなく、今後の生活についても考え始める必要があります。
ただし、すぐにすべてを決める必要はありません。
まずは本人がどのような生活を望んでいるのか、どのようなことに不安を感じているのかを家族で共有することが大切です。
また、運転の継続やお金の管理、通院のサポートなど、今後の生活に関わることについても早めに話し合っておくと安心です。

認知症が進行すると、自分の希望を伝えることが難しくなる場合があります。
そのため、症状が比較的軽いうちに本人の意思を確認しておくことには大きな意味があります。
ステップ③ 今後のケア・支援体制を考える
認知症の診断を受けても、すぐに介護が必要になるとは限りません。
しかし、将来に備えて利用できる支援やサービスを知っておくことは安心につながります。
地域包括支援センターでは、介護保険サービスや地域の支援制度について無料で相談できます。
また、症状に応じて訪問介護やデイサービスなどを利用することで、本人の生活を支えながら家族の負担を軽減できる場合もあります。
すべてを家族だけで抱え込もうとすると、介護する側の負担が大きくなりやすくなります。
利用できる制度や支援を早めに把握しておくことで、選択肢を広げやすくなります。

認知症への対応は、家族だけで抱え込まず、医療・介護・地域の支援を活用しながら進めることが大切です。
認知症の初期対応で得られるメリット

認知症は早く見つけること自体が目的ではありません。
大切なのは、早い段階で状況を把握し、利用できる治療や支援につなげることです。
症状が比較的軽いうちに対応を始めることで、生活への影響を抑えられる可能性があります。
また、本人だけでなく家族にとっても、今後の選択肢を持ちながら準備を進めやすくなります。
症状の進行を遅らせる可能性がある
認知症は現時点では完全に治すことが難しい一方で、症状の進行を緩やかにすることを目的とした治療薬が使用されています。

現在は認知症の種類や症状に応じて複数の治療薬が使用されており、アルツハイマー型認知症では記憶や学習に関わる神経伝達物質の働きを補う薬などが用いられています。
効果の現れ方には個人差がありますが、症状が比較的軽いうちから治療を始めることで、日常生活の機能を維持しやすくなる可能性があります。
早期発見のメリットは、認知症を治すことではなく、できるだけ今の生活を長く維持するための選択肢を持てることにあります。
新しい治療の選択肢が広がる
認知症の治療は、これまで薬物療法が中心でしたが、近年は再生医療の分野にも注目が集まっています。
再生医療とは、体が本来持っている修復する力を活用し、失われた機能の回復を目指す医療です。
認知症の分野でも、神経細胞の保護や機能回復を目的とした取り組みが行われており、新たな治療の選択肢として期待されています。
その一つが培養上清液を活用した治療です。
培養上清液とは、細胞を培養する過程で得られる上澄み液で、成長因子やサイトカインなどの生理活性物質を豊富に含んでいます。
これらの成分には、脳内の炎症を抑えたり、神経細胞同士のつながりを支えたりする働きが期待されています。

当院では、培養上清液を点鼻によって投与する治療を行っています。
点鼻投与は、鼻の奥にある嗅神経の経路を利用し、有効成分を脳へ届けることを目指す方法です。
注射を必要とせず、身体への負担を抑えながら治療を行えることも特徴です。

認知症は症状が進行するほど、利用できる治療や支援の選択肢が限られていく場合があります。
早い段階で状態を把握することで、薬物療法だけでなく再生医療を含めた幅広い選択肢を検討しやすくなります。
家族との関係悪化を防げる
認知症の初期症状は、物忘れそのものよりも家族とのすれ違いとして現れることがあります。
同じ質問を繰り返すことに家族が苛立ったり、本人は忘れているつもりがないため言い争いになったりすることもあります。
また、被害妄想や怒りっぽさが目立つようになると、お互いに強いストレスを抱えやすくなります。
早い段階で認知症について理解し、症状として起きている変化だと分かるだけでも接し方は大きく変わります。
「なぜこんなことをするのだろう」ではなく、「認知症による変化かもしれない」という視点を持つことが、本人と家族の負担を軽減する第一歩になります。
認知症予防のために日常生活でできること

認知症は年齢を重ねることで誰にでも起こる可能性がありますが、日々の生活習慣が発症リスクに関係することも分かっています。
もちろん、特定の方法だけで認知症を完全に防げるわけではありません。
しかし、運動や食事、人との交流などを意識することで、認知機能の維持につながる可能性があります。
難しいことを始める必要はありません。
日常生活の中で取り入れやすい取り組みから続けていくことが大切です。

運動・食事・睡眠など生活習慣の見直し
脳の健康を維持するためには、体全体の健康管理も重要です。
とくに運動不足や睡眠不足、高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、認知症のリスクに関係すると考えられています11。
ウォーキングや軽い筋力トレーニングなどの運動は、脳への血流を保つことにつながります。
また、野菜や魚を中心としたバランスの良い食事や、十分な睡眠を心がけることも大切です。

特別な健康法よりも、適度な運動・食事・睡眠を継続することが認知機能の維持につながります。
認知トレーニング・人との交流
脳は使う機会が減ると働きが低下しやすくなります。
読書や計算、パズルなどで頭を使うことはもちろん、人との会話や地域活動への参加も認知機能の維持に役立つと考えられています。

人との交流は、単に会話を楽しむだけでなく、予定を覚える、相手の気持ちを考える、自分の考えを伝えるなど、さまざまな認知機能を自然に使う機会になります。
そのため、記憶力や注意力など複数の認知機能を無理なく使い続けることにつながります。
認知症予防は一人で頑張るだけではなく、人とのつながりを持ち続けることも大切な要素です。
ストレスやうつのケア
強いストレスやうつ状態が続くと、集中力や記憶力が低下しやすくなります。
また、外出や人との交流が減ることで、活動量そのものが低下してしまうこともあります。
気分の落ち込みや不眠が続いている場合は、「年齢のせい」と考えずに相談することも大切です。

うつ病が背景にある場合は、適切な治療によって改善が期待できることもあります。
心の不調を放置しないことも、脳の健康を守るための大切な取り組みの一つです。
よくある質問(Q&A)

認知症は予防できますか?家族としてできるサポートはありますか?
認知症を完全に予防する方法は確立されていません。
しかし、運動や食事、十分な睡眠、人との交流などを意識することで、発症リスクを下げたり認知機能の維持につながったりする可能性があります。
家族としては、散歩や趣味への参加を促したり、会話の機会を増やしたりすることも一つの方法です。
特別なことを始める必要はなく、本人が無理なく続けられる生活習慣を支えることが大切です。
認知症は治りますか?
現在のところ、多くの認知症は完全に治すことが難しいとされています。
ただし、早い段階で治療や支援を始めることで、症状の進行を緩やかにしたり、生活機能を維持したりできる可能性があります。
また、認知症と似た症状を起こす病気が原因の場合は、治療によって改善が期待できることもあります。
そのため、「治るかどうか」だけではなく、今の状態に合った治療や支援を早めに取り入れることが重要です。
どの診療科を受診すればいいですか?かかりつけ医でも大丈夫ですか?
気になる症状がある場合は、まずかかりつけ医に相談して問題ありません。
必要に応じて、脳神経内科や精神科、物忘れ外来などの専門医療機関を紹介してもらえます。
どの診療科に行くべきか分からないからと受診をためらう必要はありません。
すでに通院している医療機関がある場合は、普段の体調や病歴を把握しているかかりつけ医に相談することで、その後の受診先についてもアドバイスを受けやすくなります。
家族が認知症と診断されたら、まず何をすればいいですか?
まずは本人の気持ちや希望を家族で共有することから始めましょう。
認知症と診断されると不安が大きくなりがちですが、すぐにすべてを決める必要はありません。
今後の生活や通院、運転、お金の管理などについて、少しずつ話し合っていくことが重要です。
症状が比較的軽いうちに本人の意思を確認しておくことで、今後の生活設計や支援体制についても考えやすくなります。
一人暮らしの親が心配です。どう見守ればいいですか?
まずは連絡や訪問の頻度を少し増やし、普段の様子を把握することから始めましょう。
電話で同じ話を繰り返すことが増えていないか、薬の飲み忘れや支払いのミスがないかなど、小さな変化が手がかりになることがあります。
離れて暮らしている場合は、近隣の家族や親族、地域包括支援センターなどとも連携しながら見守る方法もあります。
不安が強い場合は、見守りサービスの利用を検討することも選択肢の一つです。
認知症になったら施設に入るべきですか?
認知症と診断されたからといって、すぐに施設へ入る必要があるわけではありません。
認知症の進行度や生活状況によっては、自宅で生活を続けながら通院や介護サービスを利用することも可能です。
実際には、訪問介護やデイサービスなどを活用しながら、自宅で生活を続けている人も少なくありません。
一方で、一人暮らしが難しくなった場合や、家族だけでの介護が大きな負担になっている場合は、施設入所を検討することもあります。
「認知症だから施設」ではなく、本人の希望や生活環境、家族の状況を踏まえて、その時点で最適な選択肢を考えることが大切です。
まとめ|気づいたときが早期発見のチャンス

認知症の初期症状は、単なる物忘れだけとは限りません。
同じ質問を繰り返す、慣れた道で迷う、以前と比べて性格や行動が変わったように見えるなど、さまざまな形で現れることがあります。
認知症の種類によって目立ちやすい症状も異なります。
物忘れが中心となる場合もあれば、意欲の低下や幻視、性格の変化などが先に現れることもあります。
大切なのは、一つひとつの症状に振り回されるのではなく、「以前と比べて変化が続いているか」という視点で様子を見ることです。
気になる変化があったとしても、それだけで認知症と決まるわけではありません。
早い段階で状態を確認することで、治療や支援の選択肢を広げやすくなります。
認知症と診断された場合でも、すぐに生活が大きく変わるわけではありません。
症状や状況に応じて利用できる治療や支援を活用しながら、自分らしい生活を続けている人も多くいます。
本人や家族だけで判断しようとせず、気になる症状が続いている場合は医療機関や相談窓口を活用してみてください。
気づいたときの一歩が、その後の生活を考える大切なきっかけになります。
参考文献
- 『ぜんぶわかる認知症の辞典』(監修:河野和彦 成美堂出版、2022年)、8~9ページ。
- 厚生労働省「認知症参考資料」2023.4.16、https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001088515.pdf
- 『ぜんぶわかる認知症の辞典』(監修:河野和彦 成美堂出版、2022年)、10~11ページ。
- 『ぜんぶわかる認知症の辞典』河野和彦監修、成美堂出版、2022年、26~27ページ。
- 『ぜんぶわかる認知症の辞典』河野和彦監修、成美堂出版、2022年、12、56ページ。
- 『ぜんぶわかる認知症の辞典』河野和彦監修、成美堂出版、2022年、12、56ページ。
- 『ぜんぶわかる認知症の辞典』河野和彦監修、成美堂出版、2022年、13、57ページ。
- 『ぜんぶわかる認知症の辞典』河野和彦監修、成美堂出版、2022年、12、56ページ。
- 『ぜんぶわかる認知症の辞典』河野和彦監修、成美堂出版、2022年、13、57ページ。
- 日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』(株式会社 医学書院、2017年),36~38ページ。
- Medical Care Bridge Institute. “WHOが提唱する認知症予防のための12の対策”. Medical Care Bridge Institute. https://mcbi.jp/lifestyle/preventive-measures/who-risk-reduction/, (2026.6.17)
