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認知症が急に悪化した時の原因と家族向けの対処法

「認知症が一気に進んだ気がする」と感じても、年齢や病気の進行だけで自己判断してしまうのは危険です。

たとえば、急に会話がかみ合わない、歩き方が変わった、食事や水分を取れなくなったとき、「認知症だから仕方ない」と様子を見続けた結果、感染症や脱水、薬の影響、脳梗塞などの発見が遅れることがあります。

認知症は種類や進行段階によって症状の出方が異なり、治療や支援の選び方も一人ひとり違います。

多くのトラブルは、正しい情報不足や相談先を間違えたことから起こります。

この記事では、認知症が急に進んだように見える原因、受診すべきサイン、家族ができる対応、医師や専門家に相談する重要性をわかりやすく解説します。

後悔しない判断のために、まずは正しい知識を身につけていきましょう。

認知症が一気に進むのはなぜ?

認知症は少しずつ進行するイメージがありますが、実際には「数日から数週間で急に悪くなった」と感じる場面があります。

急な変化があると、病気そのものが進んだのか、生活環境や体調の影響で一時的に悪化しているのかが分かりにくくなります。

急な悪化は、認知症そのものの進行だけでなく、体調不良や環境の変化が影響している場合もあります。

まずは、認知症の基本を整理したうえで、どのようなきっかけで症状が一気に進んだように見えるのかを確認します。

認知症とは

認知症とは、後天的な脳の障害によって、記憶、理解、判断、言葉を使う力などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障が出ている状態を指します1

認知機能には、物を覚える力だけでなく、注意を向ける力、段取りを考える力、状況に合わせて判断する力も含まれます2

加齢による物忘れでは、体験の一部を忘れても、ヒントがあれば思い出せることが少なくありません。

一方、認知症では体験そのものが抜け落ち、ヒントを出しても思い出せないことがあります3

たとえば、昨日の夕食のメニューを思い出せないのは加齢でも起こりますが、夕食を食べたこと自体を忘れている場合は認知症による記憶障害が疑われます。

ただし、認知症と診断されていても、急な混乱、強い眠気、食欲低下、歩きにくさなどが出た場合は、認知症そのものの進行だけで説明できないことがあります。

感染症、脱水、薬の影響、睡眠不足などで一時的に認知機能が落ちることもあるため、変化の速さときっかけを見て判断することが大切です4

認知症の種類と特徴

認知症は1つの病気の名前ではなく、原因となる病気によっていくつかの種類に分けられます。

種類によって現れやすい症状や進行の仕方が異なるため、まずは代表的なタイプを知っておくことが大切です。

最も多いのはアルツハイマー型認知症と言われています6

⑦睡眠不足・薬物の影響

眠れない日が続くと、注意力や判断力が落ち、日中の混乱が強くなります。

また、睡眠薬、抗不安薬、痛み止め、かぜ薬などの影響で、眠気、ふらつき、急な混乱が出ることもあります。

せん妄といって、急に意識がぼんやりしたり、時間や場所が分からなくなったりする状態が起こる場合もあります7

薬の影響が疑われる場合でも、自己判断で中止するのは避ける必要があります。

飲み始めた薬、増えた薬、飲む時間、症状が強くなった時期をメモして医師に伝えると、調整の判断がしやすくなります。

急な悪化と薬の変更時期が重なる場合は、薬剤の見直しで状態が改善する可能性もあります。

認知症の進行段階と一気に進むサイン

認知症は、ある日突然発症する病気ではなく、軽い物忘れが現れる段階から徐々に進行していきます。

ただし、実際には一直線に悪化するわけではなく、体調不良や環境の変化をきっかけに短期間で症状が大きく進んだように見えることもあります。

現在どの段階にあるのかを知ることは、今後の生活や介護を考えるうえで重要な判断材料になります。

また、急な変化が認知症の進行によるものなのか、それとも別の病気やトラブルによるものなのかを見極めることも大切です。

進行段階と急な悪化のサインを知っておくことで、適切なタイミングで医療や介護の支援につなげやすくなります。

認知症の4つの進行段階

認知症は一般的に、「前兆(MCI)→初期→中期→末期」という流れで進行します8。ただし、進行スピードには個人差があり、同じ認知症でも症状の現れ方は異なります。

前兆にあたる軽度認知障害(MCI)は、認知機能の低下がみられるものの、日常生活への支障はまだ大きくない段階です9

一方で、初期から中期へ進むにつれて生活への影響が目立ち始め、家族が変化に気づきやすくなります。

どの段階で一気に進みやすいか

認知症はどの段階でも症状が変化する可能性があります。

ただし、中期以降になると日常生活への影響が大きくなり、家族が変化に気づきやすくなることがあります。

中期になると、時間や場所、人の認識が難しくなり、環境の変化への対応力も低下しやすくなります10

そのため、入院や施設入所、引っ越し、家族との死別などをきっかけに混乱や意欲低下が強くなることがあります。

その結果、短期間で状態が大きく変化したように見えることもあります。

とくに血管性認知症では脳梗塞の再発によって段階的に症状が悪化する場合もあります。

急に進行したように見えても、必ずしも認知症そのものが急激に悪化したとは限りません。

身体の病気や薬の影響が隠れている場合もあるため、変化が大きいときは早めの受診が大切です。

急に進行したときのチェックポイント

認知症の人に急な変化がみられた場合は、「認知症だから仕方ない」と考えず、まず原因を確認することが重要です。

とくに短期間で状態が変わった場合は、認知症以外の病気が隠れていることもあります。

家族が普段との違いに気づくことが、早期対応につながるケースも少なくありません。

次のような変化がみられる場合は、受診を検討する目安になります。

とくに発熱、脱水、急な歩行障害、ろれつが回らないなどの症状がある場合は、認知症の進行ではなく治療が必要な病気の可能性があります。

様子見を続けるよりも、早めに医療機関へ相談することが重要です。

認知症の種類と進行スピードの違い

認知症は種類によって症状の現れ方だけでなく、進行の仕方にも違いがあります。

ゆっくり進行するタイプもあれば、脳梗塞などをきっかけに段階的に悪化するタイプもあります。

また、認知症とひとまとめにされることが多いものの、なりやすい人や注意すべき症状も異なります。

まずは代表的な認知症の特徴を比較し、その後に種類ごとの特徴を詳しく見ていきましょう。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多いタイプで、全体の約68%を占めるとされています11

初期には最近の出来事を忘れる記憶障害が目立ちやすく、同じことを何度も聞く約束を忘れるといった変化から気づかれることが少なくありません12

一般的には数年単位で比較的ゆっくり進行することが多いとされています。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などによって脳の一部が障害されることで発症する認知症です13

アルツハイマー型認知症との大きな違いは、脳血管障害を繰り返すたびに症状が悪化しやすい点です。

そのため、なだらかに進行するのではなく、階段を下りるように段階的な悪化がみられることがあります。

高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が危険因子として知られており、再発予防が進行抑制にもつながります14

急な症状の悪化がみられた場合は、新たな脳梗塞などが起きていないか確認することが重要です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、レビー小体と呼ばれる異常構造物が脳に蓄積することで発症します15

特徴的なのは、実際には存在しないものが見える幻視や、日によって状態が大きく変わる症状の波です。

また、体の動きが遅くなる、筋肉がこわばるなど、パーキンソン病に似た症状が現れることもあります16

症状の変動が大きいため、家族からは「急に悪くなった」「昨日は元気だったのに」と感じられることも少なくありません。

良い日と悪い日の差が大きいことも、この認知症の特徴の一つです。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉の神経細胞が変性することで発症します17

物忘れよりも、性格や行動の変化が先に目立つことが特徴です。

以前は穏やかだった人が怒りっぽくなったり、周囲への配慮が難しくなったりすることがあります。

40〜50代で発症することもあり、仕事や家庭生活への影響が比較的早い段階から現れることがあります18

単なる性格の変化と思われやすいため、周囲が異変に気づきにくい認知症の一つです。

認知症の進行を防ぐためにできること

認知症の進行を完全に止める方法は、現時点では確立されていません

ただし、生活習慣を整えること、本人が安心して過ごせる関わり方を増やすこと、必要なタイミングで医師に相談することは、認知機能や生活機能を保つうえで大切です。

進行予防というと特別な治療を思い浮かべるかもしれませんが、実際には毎日の睡眠、食事、運動、会話、外出、家族の声かけが大きく関わります。

「生活を整える」「接し方を見直す」「医療につなげる」の3つを組み合わせることが、認知機能や生活機能を保つための基本です。

生活習慣を整えるポイント

生活習慣の見直しは、認知症を治すためというより、脳と体が働きやすい状態を保つために行います。

高血圧や糖尿病、脂質異常症などは認知症のリスクを高める要因とされており19、体の状態を整えることは認知機能の維持にもつながります。

大切なのは、急に完璧な生活へ変えることではありません。

本人が無理なく続けられる範囲で、睡眠、食事、活動量、人との関わりを少しずつ整えることが現実的です。

①規則正しい生活

睡眠、食事、起床時間が乱れると、日中の眠気や混乱が強くなりやすくなります。

夜に眠れず昼間に長く寝てしまう生活が続くと、活動量が減り、食欲も落ち、体力低下につながることがあります。

まず整えたいのは、起床時間・朝の光・食事時間の3つです。

朝決まった時間にカーテンを開ける、朝食をとる、昼寝を長くしすぎないなど、小さな固定点を作るだけでも生活リズムは整えやすくなります。

②有酸素運動・脳トレ

定期的な運動は、認知症リスクの低下に関わる重要な要素とされています20

ウォーキング軽い体操椅子に座って行う足踏みなど、息が少し弾む程度の運動を無理なく続けることが大切です。

脳トレも、難しい計算や問題集だけを意味するわけではありません。

会話をする料理の一部を担当する買い物メモを一緒に作る昔の写真を見ながら話すといった日常の活動も脳への刺激になります。

本人が嫌がる課題を無理に続けるより、楽しさや役割が残る活動を選ぶ方が続けやすくなります。

③聴力・視力の維持

耳が聞こえにくい、目が見えにくい状態が続くと、会話や外出の機会が減り、脳への刺激も少なくなります

本人が「聞こえている」と言っていても、聞き返しが増えたテレビの音が大きい会話に入らなくなった場合は、聴力の低下が生活に影響している可能性があります。

補聴器や眼科受診は、単なる不便の解消ではなく、脳への刺激を保つための対策として考えられます。

補聴器は合うまで調整が必要なこともあるため、使いにくいからすぐやめるのではなく、専門家に相談しながら調整していくことが大切です。

家族や周囲の適切な関わり方

認知症では、周囲との関わり方によって本人の不安や混乱の程度が変わることがあります。

記憶力や判断力が低下している状態では、正しいことを伝えるよりも、安心して生活できる環境を整えることが重要です。

同じ質問を繰り返したり、約束を忘れたりすると、家族も疲れてしまいます。

しかし、「さっき言ったでしょ」「また忘れたの?」と責められた感覚が積み重なると、自信を失ったり、会話を避けたりする原因になることがあります。

予定は紙に書いて見える場所に置く伝える内容は短くする一緒に確認する習慣を作るなど、失敗しにくい環境づくりが役立ちます。

また、入院や施設入所、引っ越しなどで環境が変わるときは、時計やカレンダー、家族写真、普段使っている衣類や小物などを活用し、安心できる手がかりを残すことも大切です。

家族だけで抱え込まず、介護サービスや地域の支援も活用しながら、無理のない形で関わり続けることが大切です。

医師への相談・治療を検討する

物忘れや行動の変化に気づいても、「年齢のせいかもしれない」と受診を先延ばしにすることがあります。

しかし、早い段階で相談できれば、認知症以外の原因を確認したり、生活習慣や薬の見直しを始めたりしやすくなります。

とくに軽度認知障害(MCI)の段階では、認知症へ進行する人がいる一方で、正常に近い状態へ戻る人もいます

MCIの人では年間約5~15%が認知症へ移行し、年間16~41%が正常に近い状態へ回復するとの報告があります21

MCIなど初期段階での受診目安

MCIとは軽度認知障害のことで、認知機能の低下はあるものの、認知症とまではいえない状態を指します。

日常生活はおおむね保たれているため見過ごされやすい一方で、生活習慣の見直しや医療相談を始める大切なタイミングでもあります。

 

複数当てはまる場合は、まずかかりつけ医に相談し、必要に応じてもの忘れ外来や専門外来につなげてもらう流れが現実的です。

薬物療法・再生医療など治療法の選択肢

認知症の治療では、薬物療法、認知機能訓練、生活習慣の改善などを組み合わせながら、認知機能の低下をできるだけ緩やかにし、生活の質を維持することを目指します。

現在使用されている認知症治療薬には、神経細胞同士の情報伝達を助ける薬や、アルツハイマー病の原因物質に作用する薬があります22

こうした治療は認知機能低下の進行を緩やかにする効果が期待される一方で、認知症そのものを完治させる治療ではありません

また、認知機能訓練や運動療法などの非薬物療法も認知症治療の重要な柱です。

本人の状態に合わせて取り入れることで、認知機能や生活機能の維持につながることが期待されています。

そのため近年は、神経細胞だけでなく、神経同士のつながりや脳内環境にも着目したさまざまな治療法が検討されています。

その一つとして、幹細胞培養上清を活用した再生医療があります。

幹細胞培養上清液には、成長因子やサイトカインなど、細胞同士の情報伝達に関わるさまざまな成分が含まれています23

これらの成分は、神経細胞の働きや神経同士のつながり、脳内環境に関わる可能性が期待されており、認知機能や日常生活機能の維持を目指す新たなアプローチとして注目されています。

認知症の種類や進行段階によって適した治療は異なるため、まずは現在の状態を評価したうえで治療方針を検討することが大切です。

医師に相談するメリット

医師に相談するメリットは、認知症かどうかを確認するだけではありません。

うつ、せん妄、薬の影響、正常圧水頭症、ビタミン不足など、認知症に似た症状を示す病気を見分けることにもつながります

中には、原因に応じた治療で改善が期待できるものもあります。

また、早期に相談できれば、生活習慣の見直し、薬物療法、介護サービス、専門外来への紹介などを段階的に考えやすくなります

家族だけで判断しようとすると、受診のタイミングを逃したり、介護負担が大きくなったりすることがあります。

「いつから、どの場面で、どのくらい困っているか」を整理して相談すると、検査や治療方針を決めやすくなります。

よくある質問(Q&A)

急に症状が進んだらどうすればいいですか?

数日から数週間で急に症状が悪化した場合は、認知症の進行だけでなく別の原因が隠れていることもあります。

とくに発熱、食欲低下、歩行障害、強い眠気、会話がかみ合わないといった変化がある場合は注意が必要です。

急な変化がみられたときは、いつから症状が変わったのか服薬内容や体調の変化がなかったかを整理したうえで、早めに医療機関へ相談しましょう。

認知症の治療法にはどのような方法がありますか?

認知症の治療では、薬物療法、認知機能訓練、生活習慣の改善、介護支援などを組み合わせながら進行をできるだけ緩やかにすることを目指します。

近年では、アルツハイマー病の原因物質に作用する新しい治療薬も登場しており、認知症治療の選択肢は少しずつ広がっています。

また、幹細胞培養上清を活用した再生医療など、従来の薬物療法とは異なるアプローチによる治療も選択肢の一つとして検討されています。

認知症の種類や進行段階によって適した治療は異なるため、現在の状態を評価したうえで選択肢を検討することが大切です。

認知症が進むと最後はどうなりますか?

認知症が進行すると、会話や意思表示が難しくなり、食事、排泄、移動など日常生活の多くの場面で介助が必要になります。

また、飲み込む力が低下することで誤嚥性肺炎を繰り返しやすくなったり、寝たきりに近い状態になったりすることもあります。

ただし、進行のスピードや経過には個人差があり、同じ認知症でも状態は大きく異なります。

大切なのは将来を過度に不安視することではなく、その時々の状態に合わせて医療や介護の支援を活用することです。

本人が安心して過ごせる環境づくりが、終末期ケアでも重要になります。

家族が準備しておくことは?

認知症と診断されたら、介護が必要になってから慌てるのではなく、早い段階から利用できる制度や相談先を確認しておくことが大切です。

介護保険の申請やケアマネジャーへの相談、地域包括支援センターの活用によって、介護サービスや支援制度につながりやすくなります。

また、今後の医療や介護の希望、財産管理、住まいについて家族で話し合っておくことも重要です。

本人の意思を確認できるうちに準備を始めることで、将来の選択肢を広げやすくなります。

家族だけで抱え込まず、地域の相談窓口や医療機関を活用することが大切です。

まとめ|正しく知って、進行を防ぐ行動を

認知症が一気に進んだように見えても、必ずしも病気そのものが急激に悪化しているとは限りません。

大切なのは、変化の背景を正しく理解し、早めに対応することです。

また、認知症は種類によって症状や進行の仕方が異なります。

生活習慣を整えることや、家族が安心できる環境をつくること、必要なタイミングで医療につなげることは、認知機能や生活機能を維持するための重要な取り組みです。

現在は薬物療法に加え、認知機能訓練や生活支援、再生医療などさまざまな選択肢があります。

どの方法が適しているかは認知症の種類や進行段階によって異なるため、専門家と相談しながら検討することが大切です。

物忘れや行動の変化が気になったときは、一人で抱え込まず早めに医療機関へ相談してみましょう。

早期に状態を把握し、適切な対応を始めることが、本人らしい生活を長く続けるための第一歩になります。

参考文献

  1. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』(監修:河野和彦 成美堂出版、2022年)、8~9ページ。
  2. 日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』(株式会社 医学書院、2017年),2~3ページ。
  3. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』(監修:河野和彦 成美堂出版、2022年)、10~11ページ。
  4. Huang J, Levin MC.“せん妄”. MSDマニュアル プロフェッショナル版. 2025.02. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E3%81%9B%E3%82%93%E5%A6%84%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87/%E3%81%9B%E3%82%93%E5%A6%84, (20260603)
  5. 厚生労働省「認知症参考資料」2023.4.16、https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001088515.pdf[、2026.4.21/efn_note]。

    そのほかにも、脳梗塞などが関係する血管性認知症や、幻視が特徴的なレビー小体型認知症、性格や行動の変化が目立つ前頭側頭型認知症などがあります。

    認知症は種類によって症状の現れ方や進行の仕方が異なります。

    そのため、「認知症だからこうなる」と一括りにはできません。

    認知症が一気に進むおもな原因

    認知症が一気に進んだように見えるときは、脳の変化だけでなく、生活環境、身体の病気、薬、心理的な負担が重なっていることがあります。

    原因を分けて考えると、家庭で見直せることと、医療機関で確認すべきことが整理しやすくなります。

    とくに数日単位で急に変わった場合は、認知症の自然な進行として片づけず、体調や薬の変化まで確認する必要があります。

     

    ①脳への刺激不足

    会話、外出、家事、趣味などが減ると、脳を使う機会も少なくなります。

    認知症では、すでに低下している力だけでなく、まだ残っている力をどう使い続けるかが重要です。

    危ないからと何でも周囲が代わりに行うと、本人が考える場面や達成感を得る機会まで減ってしまいます。

    脳への刺激は、難しい計算や特別な訓練だけを指すものではありません。

    洗濯物をたたむ食器を並べる昔の写真を見ながら話す短時間散歩するなど、日常の中で本人が関われる活動も刺激になります。

    安全を守りながら、できることを完全に奪わないことが生活機能を保つ土台になります。

    ②急激な環境変化

    入院、引っ越し、施設入所、部屋替えなどは、本人にとって大きな負担になります。

    慣れた場所、見慣れた家具、いつもの時間の流れが変わると、「ここはどこか」「次に何をすればよいか」が分かりにくくなり、不安や混乱が強くなることがあります。

    とくに入院中は、睡眠のリズムが乱れやすく、検査や治療で人の出入りも多くなります。

    その結果、夜間に落ち着かない、家に帰りたがる、点滴を抜こうとするなどの行動が出ることもあります。

    環境を変える必要があるときは、時計、カレンダー、家族写真、普段使っている衣類や小物など、本人が見て安心できる手がかりを残すことが大切です。

    ③過度なストレス

    認知症があると、分からないことやできないことが増え、本人も不安を抱えやすくなります

    そこに叱責、急かされる場面、家族の緊張感が重なると、怒りっぽさ、不眠、拒否、落ち込みとして表れることがあります。

    これは性格が急に変わったというより、困りごとをうまく言葉にできない状態として出ている場合があります。

    心理的な負担が強いと、睡眠や食欲も乱れやすくなり、結果として認知機能がさらに落ちたように見えます。

    正しい説明を何度もするより、「大丈夫です」「一緒に確認しましょう」と安心できる流れを作るほうが、生活は落ち着きやすくなります。

    ④行動制限・考える機会の減少

    転倒や迷子を心配して外出を控えることはありますが、行動制限が長く続くと、体力、睡眠、会話量、意欲が同時に落ちやすくなります。

    閉じこもりが続くと昼夜逆転が起こり、夜に眠れず、日中にぼんやりする時間が増えることもあります。

    完全に制限するより、付き添い・短時間・決まった場所で活動を残すほうが現実的です。

    外出が難しければ、玄関先まで出るベランダで日光を浴びる室内で簡単な体操をするところからでも構いません。

    大切なのは、危険を減らしながら、本人が考えて動く機会を残すことです。

    ⑤失敗を責められる心理的負担

    同じことを何度も聞く、約束を忘れる、物をなくすといった行動は、家族にとっても大きな負担です。

    ただ、「また忘れたの?」「何回言えば分かるの?」という言葉が増えると、本人には内容よりも責められた感覚が残りやすくなります。

    その結果、失敗を隠す、会話を避ける、怒って反発するという悪循環につながることがあります。

    対応を変えるときは、本人を甘やかすという意味ではなく、生活を安定させるための工夫として考えます。

    「さっき言ったでしょ」ではなく、「一緒に確認しましょう」と言い換え、予定は紙に書いて見える場所に置くほうが伝わりやすいことがあります。

    本人の不安を減らすことは、家族の負担を減らすことにもつながります。

    ⑥ほかの病気の合併

    脳梗塞、感染症、脱水、便秘、痛み、栄養不足などは、認知症の症状を急に悪化させたように見せることがあります。

    高齢者では、肺炎や尿路感染でも発熱がはっきり出ないことがあり、急にぼんやりする、食べない、歩けないといった変化として現れる場合があります。

    数日で会話がかみ合わない、歩き方が変わった、食事や水分が取れない、呼びかけへの反応が悪い場合は受診の目安です。

    とくに片側の手足に力が入らない、ろれつが回らない、急に転びやすくなった場合は、脳卒中の可能性もあるため早急な対応が必要です5厚生労働省.“健康に関するQ&A 糖尿病編”. 厚生労働省広報誌『厚生労働』2024年10月号. 202410. https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202410_006.html, (20260603)

  6. Huang J, Levin MC.“せん妄”. MSDマニュアル プロフェッショナル版. 2025.02. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E3%81%9B%E3%82%93%E5%A6%84%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87/%E3%81%9B%E3%82%93%E5%A6%84, (20260603)
  7. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』2022年、26~27ページ。
  8. 日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』株式会社医学書院、2017年、154~156ページ。
  9. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』2022年、26~27ページ。
  10. 厚生労働省「認知症参考資料」2023.4.16、https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001088515.pdf、2026.4.21
  11. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』2022年、12、56ページ。
  12. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』2022年、13、57ページ。
  13. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』2022年、13、57ページ。
  14. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』2022年、12、56ページ。
  15. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』2022年、12、56ページ。
  16. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』2022年、13、57ページ。
  17. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』2022年、13、57ページ。
  18. 日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』株式会社医学書院、2017年、118~125ページ。
  19. 日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』株式会社医学書院、2017年、133~134ページ。
  20. 日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』株式会社医学書院、2017年、147ページ。
  21. 『ぜんぶわかる認知症の辞典』成美堂出版、2022年、124~125ページ。
  22. 上田実『改訂版 驚異の再生医療~培養上清が世界を救う~』株式会社扶桑社、2022年、114ページ。